歯を削る、抜くということを一度でもすれば元に戻ることはありません。多くの方は、このことを理解していると思いますが、そこに至らないための予防のためのケアがしっかり行えているかと言えば、決して十分でないというのが現状ではないでしょうか。
抜歯や切削が必要となる原因は虫歯や歯周病が大半ですが、そのような状態にしないためには予防対策をしっかり行うようにしてください。対策とは毎日の歯磨き等のセルフケアはもちろん、歯科で定期的に(虫歯や歯周病の)検診を受ける、あるいは歯のクリーニングをするといったこともしていけば、発症リスクを大きく低減させることができます。
ちなみに定期検診を受けてきた方とそうでない方の歯の残存歯数というのは、年を経るに連れて大きく差が出ることがある調査によってわかってきています。残存する歯が少ないと認知症の発症リスクが高くなるなど全身の健康などについても影響するようになります。また虫歯が進行すれば、治療費もそれだけ負担となってしまいます。このような状況にならないためにも歯についても定期的な健診を受けましょう。
虫歯や歯周病をはじめとする口内トラブルを早期に発見し、速やかに治療をしていくと、治療期間は短縮でき、治療費を抑えることができます。つまり歯や歯茎にかかる損傷も軽度で済むことになるので、オーラルフレイル(口腔機能の低下)の予防にもつながります。これらによって、将来的に失うとされる歯を減らせる可能性も高くなります。
なお口腔内の状況というのは、生活習慣を見直すなどすれば、一変していきます。そのためには、定期的に歯科健診を受け、オーラルケアに努めていきましょう。
定期歯科健診では、虫歯のチェックのほかに歯周ポケット検査も行います。歯周ポケットとは、歯と歯茎の境目にあるとされる溝のことですが、その中に専用の器具を挿入し、溝の深さを計測します。病状が進行するとその溝は深くなっていきます。つまり歯周病の進行度を調べるのに最も適した検査です。
歯周病は放置が続くと、歯が抜け落ちるようになります。また身体への影響ですが、動脈硬化を促進させやすく、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳血管障害(脳梗塞 等)の発症リスクを上昇させます。また糖尿病に罹患すると歯周病を発症しやすくなるということもあります。
歯のメインテナンス方法もしっかりみていきます。その中でも歯磨き(ブラッシング)は、虫歯や歯周病の予防に大切なセルフケアでもあります。
まずはしっかり磨けているかの確認をするため、歯磨き後に染め出し液を歯の表面に塗布していきます。軽く口をゆすいだ後も色が残っているとなれば、そこが磨き残しということになります。このほかにも歯を悪くさせる悪習慣(普段の食生活、歯ぎしり、食いしばり 等)もみていき、必要があれば改善していきます。
歯垢(プラーク)については、毎日しっかりと歯磨き(ブラッシング)ができていれば、除去することは可能です。
ただケアがきっちりできていなければ、やがて歯垢は石灰化して歯石になってしまいます。このような状態になると歯磨きだけの除去では困難となります。さらに歯石は性質上、軽石みたいに表面がざらつくので、通常の歯と比較しても汚れがさらにつきやすくなります。
当院では診察(歯科健診)の結果、虫歯や歯周病でないと診断された場合、専用の機器を使用して、歯垢(プラーク)や歯石等を徹底的に除去していく歯のクリーニングを行います。その際に超音波の力で歯石を落とす超音波スケーラー等を使用していきます。これらによって歯を清潔な状態に維持していきます。
また歯磨きでは取れないとされる歯の着色汚れ(コーヒーや喫煙 等)に関しては、エアフローを使います。これはジェットクリーニングとも呼ばれ、ジェット水流等によって歯の着色などを落としていきます。
ちなみに歯科医師あるいは歯科衛生士が、専用の医療機器を用いて徹底した口腔内清掃を行うことをPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と言います。
口腔内を清潔な状態にしておけば、虫歯や歯周病の予防につながります。また健康な歯でしっかり噛み、嚥下するということも口内の細菌を減らすのに有効とされています。
ただ十分とされるセルフケア(正しいブラッシング 等)を行っているつもりでも、歯についた汚れを全て除去していくのは困難です。例えば歯間などに取り切れない汚れは残ることもあります。このような汚れは、定期的に歯科医院に通って除去するようにしてください。
歯のクリーニングを歯科医院で定期的に行うことで、虫歯ができやすい、汚れが付着しやすいなどの箇所が判明するようになります。そのほかにも、虫歯の早期発見や歯周病予防にも対応しやすくなります。